なんかしんどい。

なんかしんどいことの理由が見当たらない時、ものすごくもぞもぞする。
腹が減っている?さっきたらふくクッキーを食べた。
睡眠は?毎日たくさん寝ている。
部屋も暖かい。
いたって健康。
家族も元気だ。

私の人生を変えるような大きなことは何一つ無い、至って普通の日だった。

今日は3月14日だ。正確に言うと15日の午前0時5分だ。

ゴロゴロゴロ

教室の真ん中でゲリラライブを敢行しようとする私も、
誰にも見つからず誰にもきづかれずひっそり縮こまっていようとする私も、
どちらも底の底を目指している。




転がるのは簡単すぎる。
ゴロゴロゴロゴロ
ゴロゴロゴロゴロ




底の底に行けば、天井が見えると思っているのか。

今日の夢

夢の中の私は、たいてい中学時代で止まっている。
教室で一人で、休み時間も特に何もすることがなく勉強するか机に突っ伏していた日々。もう二度と戻りたくない日々に、私はまだ捕らわれている。


今の私があの頃に戻ったら、教室のど真ん中でギターを掻き鳴らし喚き散らすのに。
あいつらの日常をぶち壊してやる。
誰も私を無視できないように。


それなのに、夢の中の私は、
私を一人にしないで。
本当は寂しいの。
なんて、机に突っ伏して、まだ被害者ヅラしているのだ。
ばかやろう。
そんな声が聞こえたのか、私はいつのまにか教室を飛び出し全速力で走り出した。


気がつくと私は神社にいた。
さっきの教室の空気をそのまま持ち込んだような湿った神社。
神様は
「3月14日に人生が変わるだろう」
確かにそう言っていた。
私は一刻も早くこんな人生終わらせたいのに、こんな夢から醒めたいのに、
神様はあと半月も、このどうしようもなく冴えない私の人生を生きろというのか?
私が神様の正気を疑ったところで夢から醒めた。



本当は、そんなお告げじみたことより、
「今この瞬間から、お前は変わることができるし、変わったっていいんだよ」
と言ってほしかった。

目を見ればその人の考えていること何もかもが分かるような気がする。


「馬鹿じゃないの?」
「なんでこんな奴と話さなきゃいけないの?」
「退屈」


など、心の声が聞こえてくるような気がする。
”分かるような気がする”というのが、ポイントで、実際には99%が被害妄想だ。
でも、そうと分かっていても、自分の醜い心が作り出した相手の声は、止むことがない。
私はとうとう人の目を見るのをやめた。
道で歩いていても、対面で話していても、会議をしていても、決して目を合わせない。
どうしても失礼に当たるときには目から必死に集中を逸した。
そうすると、今まで悩んでいたコミュニケーションが、ウソのように楽になった。
さらにマスクなんかすると、もう向かうところ敵なし。



心の声はもう聞こえない。
私は無敵だ。
怖い上司とだって、馴染めない同期とだって、憧れの先輩とだって、堂々と話すことが出来る。



顔のほとんどがマスクで隠され、唯一見える目も虚ろ。
明らかに不審者然とする出で立ちは、まさしく裸の王様だった。
裸の王様は、今日も意気揚々と歩く。
自分が裸だと知らずに。

色が生まれた日

20XX年XX月XX日。その日も、いつもと変わらない普通の日だったと思う。
このように、色は突然変異で生まれた説と、いや、徐々に色は生まれていたのだという説がある。
ここでは宇宙から色がやってきた説は考えないこととする。


とはいえ、色は、あまりにも唐突に私の世界にやってきた。
信号は赤と青と黄色でできている。
空は青い。
標識は黄色い。
私は世界中の色にそんな風に名前をつけながら歩いた。



この世紀の大事件は、意外にものほほんとした形で展開している。
コンビニがCDショップになり
CDショップは花屋になり
花屋は歯医者になった。



一ヶ月もすると、あの事件のことを取り立てて考える人ももういない。
もしかすると色は初めから存在していたんじゃないかというのが、今の私のおおかたの見解だ。

最近3

今日もプロデューサー業を一通りこなした後、ふと鏡を見ると、
風呂にも入らず肌もギトギト、二重アゴの醜い女が写っていた。


私はアイドル達の輝きと引き換えに、何か大事なものを失ったのかもしれない。
その時私はアイドルをプロデュースする前に、まず目の前のこの女をプロデュースすべきだと気付いた。

最近2

先日、アイドル達は普段は皆ごく普通の女の子と言いましたが、あれは嘘です。


私はスプーン曲げが趣味の女の子や煙突を探すことを生業としている女の子なんて聞いたことがないし、その斜め上のキャラ設定を、まだ完全には受け止められずにいます。